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noteエンジニアが2025年に挑戦する、重要課題11選

2025年度はnote株式会社にとって、これまでにないチャレンジの年になるでしょう。今まで創り上げてきたnoteの世界を拡充していくとともに、新規プロダクト開発や新機能のリリースなど、様々な新しい取り組みをしていく予定です。

我々の挑戦は、単なる成長を目的としたものではありません。「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」という大きなミッションを達成するための大きな一歩です。

2014年にnoteをリリースして以来、私たちは多様なクリエイターを支え、プラットフォームを飛躍的に成長させてきました。累計会員数は850万人を超え、月間の投稿数は約110万件にもなりました。

2024年度では、システムの安定性とパフォーマンス改善を行い、推薦機能の強化や記事の販売率向上などを行い、エンジニアリングを通じてクリエイターの可能性を広げてきました。

「noteではもう開発することがないのでは?」と感じている方もいるかもしれません。しかし、まだまだやりたいこともやれることも、山積みの状態です。

クリエイターエコノミーな世界を作り上げていく、2025年のnoteの技術課題を紹介していきます。

▲2024年の課題はこちら

1: 新規事業の立ち上げ、noteのエコシステムをさらに発展させていく

2024年度は、開発チームにとって重要なターニングポイントでした。新規事業チームが立ち上がり、本格的な開発がスタートしました。

2025年には、新規事業を無事にリリースすることが、主要な課題の一つです。noteと連携して、エコシステムを発展させていくことで、従来の枠を超えたプロダクトを実現していきます。2025年度は、多様なクリエイターサクセスが実現できるでしょう。

また、今回の新規開発で得た知見は、次なるプロダクトへと活かされていくはずです。2025年の開発を基盤として、様々なエコシステムをつくりあげて進化していきます。

課題 / 施策

  • 新規事業を計画通りにリリースし、ユーザー基盤を拡大する

  • 2025年度の開発経験を活かし、すばやく新規事業を立ち上げる方法を確立する

  • 開発体制の強化を図り、アーキテクチャパターン、ミドルウェア、デザインシステムの最適化に注力

2: 高負荷に耐えうる基盤の開発。開発生産性向上のためのCI/CD改善や支援ツールの導入

2024年、サーバーサイドのシステムの安定性とパフォーマンスの向上を目指し、様々な施策を実施しました。

システムの根幹となる、RubyやRails、MySQLなどのミドルウェアを最新バージョンにアップグレードすることで、持続的にセキュリティを向上させ、機能性を維持してきました。

他にも、ユーザー管理の効率化を図り、Amazon SESの導入を通じてメール配信の信頼性を向上させ、コストの削減にも成功しました。

また、開発者体験の改善にも力を入れた年でした。CircleCIの実行時間短縮とFlaky testsの成功率改善を行い、CI/CDの信頼性を高めました。Devcontainerを導入し、一貫性のある開発環境の整備も行いました。

2025年度では、高負荷への対策や巨大なコードベースのリファクタリングなどを中心に行っていく予定です。

noteは毎年会員登録数もアクセス数も右肩あがりになっており、月間の投稿数は110万件を超えています。AppやDBの過負荷が引き起こすサーバーダウンやパフォーマンスの劣化に対する対策が必要です。ミドルウェアやライブラリの最新追従を引き続き行いつつ、高負荷に耐えうる準備をしていく必要があります。

また、noteは2014年のリリース当初からRailsでの開発を続けてきているため、コード数が膨大になっています。開発者の認知負荷を軽減するためのリファクタリングと適切なモジュール化を行っていく予定です。

そして、開発者や運用者支援のためのツール類の整備をしていくことも、重要課題の一つです。開発者体験を向上し、リリースサイクルをさらに加速させていきます。

課題 / 施策

  • モノリシックなRailsコードのモジュラー化をさらに推進し、システムの柔軟性を高める

  • ミドルウェアやライブラリの最新追従を常に行い、技術的負債を削減する

  • 開発生産性向上のためのCI/CD改善や、開発者支援ツールの拡充を行う

  • 高速で安定したAPIパフォーマンスを維持するためのチューニング

  • 開発者の認知負荷を下げるためのリファクタリングと適切なモジュール化

  • サービス・アプリケーションレイヤーの基盤強化を通じて、急激なアクセス負荷に耐えられる安定運用を目指す

3: Next.jsでの全面的なリプレイスによるパフォーマンスの向上と 開発体験の向上

フロントエンドチームでは大規模なリアーキテクチャを敢行し、技術的負債の解消と開発効率の大幅向上を実現してきました。

これまでにNext.jsへの段階的移行、記事コンポーネント群の統合、UXライティング方針の見直しなど、デザインシステムやユーザー体験に直結するさまざまな改善を推進してきました。結果として、フロントエンド全体の可用性・保守性が向上し、日々進化するサービスに柔軟かつ迅速に対応できる基盤が整いつつあります。

詳細な背景や取り組み内容については以下の記事でも触れています。

フロントエンドチームは、開発効率化と品質向上を多面的に推進するため、オブザーバビリティとパフォーマンス改善、日々のコード品質向上、さらには中長期的なロードマップの明確化へと取り組みを拡大しています。

まず、OpenTelemetryによるモニタリング基盤の強化は、特定ページのパフォーマンス的なボトルネックを早期に発見・改善する土台となっています。加えて、ESLintからBiomeへの移行により、lintおよびformatの速度を10倍以上高速化し、開発者の日常的な作業効率を向上させました。モノレポ統合やリリースフローの半自動化など、サービス開発全体のオペレーション効率改善も行ってきました。

単なるツールチェーンの最適化にとどまらず、全ページを対象とした定期的なアクセシビリティチェックやOGP画像生成速度の4倍高速化など、クリエイターの体験を直接向上させる取り組みも行っています。

2025年以降は、こうした継続的な改善サイクルを基盤としてさらなる改善を目指します。Next.jsへの全面的なリプレイスによるパフォーマンスと拡張性の強化、Recoilから脱却した新たな状態管理への移行、そして開発体験のさらなる改善などを通じて、より柔軟で継続的に進化し続けるフロントエンドアーキテクチャを確立していきます。

課題 / 施策

  • フロントエンドのリアーキテクチャ推進

  • 状態管理の再設計により、コードの可読性と保守性を向上

  • 継続的なパフォーマンス改善を通してユーザー体験の向上

  • アクセシビリティ向上を文化として浸透させ、すべてのクリエイターが快適に創作できる環境を支援する

4: コンテンツの基盤となるMediaKitの改善をつづけ、多様な作品との出会いを増やす

noteで公開されている作品数は5000万件近くになり、書籍化された作品も300冊を超えました。

開発チームとしても、2024年は多種多様なクリエイターのコンテンツを読者に届ける施策を多く行ってきました。

クリエイターの記事を適切に届けるために、記事一覧などのページを刷新し、レコメンドベースのタイムライン形式にしました。フォロー中や興味ラベルトップなどのコンテンツを一元的に管理できる体制も構築しています。また、noteのデータ基盤や推薦基盤と連携し、より高度なコンテンツ流通を可能にする仕組み整備しました。

2025年度から、noteのコンテンツ流通強化の基盤となる『MediaKit』を開発するチームが誕生しました。note内のツールとの連携をさらに強化し、プラットフォーム運営業務の改善を目指します。

MediaKitを活用して、あらゆる作品を柔軟に表現可能にし、より様々なクリエイターが活躍できる世界を提供します。

課題 / 施策

  • クリエイターの作品が、最適な読者にリーチできるようにする

  • 多様な種類・目的のページを柔軟に構成、制御可能にする

  • デプロイなしで記事表示画面を更新できるようにし、エンジニアとPMの負荷を軽減する

  • 機械学習を活用し、リコメンデーションを効果的に適用し、ユーザー体験を向上させる

5: 推薦の質を向上し、ユーザーに合わせた体験を提供する

推薦チームでは、記事推薦システムを改善し、様々な指標で成果を向上させてきました。2024年度では、記事下の推薦機能を再評価し、GMV(総流通取引額)やレスポンス速度、CTRを大幅に改善しました。

また、老朽化したML基盤を刷新し、モデル開発からデプロイまでのリードタイムの短縮にも成功しています。

Databricksの導入により、ML開発の効率化も進めました。ABテストをほぼノーコードで実施可能にし、推薦チームだけでもスムーズに開発を進められるようになりました。

また、推薦チームのコミュニケーションを円滑にするために、PythonとAmazon Bedrockを活用した生成AIによる業務改善にも着手しました。

2024年に整備してきた基盤を活用し、2025年はさらなる改善に努めていきます。記事分類システムのアップデートを行い、推薦の質をさらに向上させます。

また、GMVに貢献するための研究開発も進めています。Databricksをフル活用して、note内の様々な出面を強化し、クリエイターと読者の出会いをさらに増やしていきます。

課題 / 施策

  • 記事分類システムをアップデートし、より精度の高いコンテンツ推薦を実現する

  • GMV向上に向けた継続的な研究開発を行い、noteの価値を高める

  • Databricksを活用し、迅速かつ正確にML成果をnoteの出面に反映

  • 推薦アルゴリズムの改善を通じて、ユーザー個々の体験を向上させる

6: チームを新設し、さらに誰でも使いやすいデータ基盤を目指す

分析基盤をLookerに移行することで、データガバナンスを強化し、データ活用環境の整備を進めてきました。

また、近年では他チームの業務改善にも力を入れています。LLMによるレポートの自動作成やニュースレターの開封率アップ施策など、データ基盤を活用した課題解決も行ってきました。

2025年は、さらなるデータ基盤の強化に取り組みます。プラットフォームとしてのデータ基盤を確立し、エンジニアが誰でもデータの変更を行いやすい環境を整備していきます。また、可用性の向上と、データオブザーバビリティの強化も行っていきます。

そして、今年度は新体制として、データプラットフォームとデータマネジメントがそれぞれ新設しました。これによって、note社内でのデータ活用がさらに広がっていく予定です。

課題 / 施策

  • データ基盤のプラットフォーム化を進め、エンジニアによる柔軟な追加変更を容易にする

  • データ可用性と観測性の向上に注力し、安定したデータ環境を整える

  • データ利用量を増やし、問い合わせを減らす方法を導入

  • LLMの活用・セマンティックレイヤーを整えることで、誰でもデータを活用できる環境を提供する

7: より良いモバイルアプリの体験をクリエイターに提供。アプリの基盤強化も追求

2024年度のアプリチームは、クリエイタートップの改善や推奨内容の見直し、タイムセール機能の導入、購入体験の向上や公開設定画面の改善、MediaKitの導入などを実施してきました。

技術面では、App UIの改善に着手し、記事コンポーネントの統一とWebとアプリ間のデザイン統一も進めています。SwiftUIとJetpack Composeへの移行も進行中で、iOS 18、Swift 6、およびAndroid OS 15への対応を進めました。

さらに、iOSDCには2名が登壇し、自社イベントもスタートさせ、チームの発信強化にも力を入れた年でした。

2025年は、これらの成果をもとに、購入者体験のさらなる改善や記事詳細PVの増加、会員登録の促進を目指し、新規事業への取り組みも進めます。また、iOSとAndroidのエンジニア採用も積極的に進めていく予定です。

さらに、SwiftUIとJetpack Composeへの移行やリアーキテクチャを進め、アプリの基盤強化を図ります。マルチアカウント対応やデザインシステムへの対応などを検証し、アプリならではの機能導入も進めていく予定です。

課題 / 施策

  • SwiftUI・Jetpack Composeへの移行とリアーキテクチャを推進し、アプリ開発の基盤を強化する

  • UI/UXを改善し、モバイルアプリならではのユーザー体験を提供

  • ユーザーの多様なニーズに応え、新たなユーザー層の獲得を目指すための機能改善を推進

8: いつでも安心して利用できるための耐障害性の強化とコスト効率の向上

SREチームはエンジニアの開発体験を向上させるための取り組みを強化してきました。

インフラの基盤をEKSへ移行してしばらく経過しましたが、アプリケーションログやアクセスログの検索性と閲覧性には一定の課題がありました。デバッグや障害対応でログの検索性がボトルネックにならないようログマネージメントの仕組みを抜本的に見直しました。新たにログ検索基盤を構築し、ログを集約し、本来のログ活用が可能となりました。

また、開発環境の安定化にも注力しました。「動かない」「デプロイが失敗した」といった問い合わせの減少を目指し、インフラ構成を柔軟に設定し、開発メンバーの要望に応えやすい仕組みを整えました。エンジニアが増えても安全に運用できるよう従来の権限モデルを見直し、これまで以上に柔軟かつセキュアな環境を提供できるようになりました。

そして、noteの安定性の向上にも取り組み、オブザーバビリティやトレーサビリティ、モニタリングの機能を強化しました。いまnoteでなにが起きているのか、可観測性を強化したことによりパフォーマンスチューニングや障害対応の質が大きく改善しました。

2025年度では、耐障害性の強化とコスト効率の向上に取り組みます。クラウドの運用コストを抑えながら、可用性を高める運用を目指します。また、インシデントマネジメントを強化し、クリエイターのみなさまに安心してnoteで創作活動を続けていただける環境を提供したいと考えています。

課題 / 施策

  • いつでも安心してnoteを利用できるように、耐障害性とコスト効率の向上

  • システムおよび人間双方の体制を万全の状態に整えるインシデントマネジメントの強化

  • セキュリティアラートの通知管理と対応の改善

9: noteで生活ができる経済圏をさらに豊かにする機能のリリース

クリエイターの経済圏を広げていくために、noteで収入がさらに得られる施策を強化してきました。2024年度では、PayPal決済やnoteポイントの導入などを実施しました。

また、新機能であるタイムセールのリリースやA/Bテストによる機能回収をつづけ、GMVを向上させることに成功しました。エンジニアリング面でも、SidekiqProのバッチジョブスケジューラを実装し、運用効率を大幅に改善しています。課金関連の大規模なリファクタリングを実施し、運用と調査がしやすい環境を構築しました。

2025年は、クリエイターの支援をさらに拡大し、noteの経済圏をさらに豊かにすることを目指しています。新機能のリリースや支払い方法の拡充、メンバーシップの強化を通じて、クリエイターの収益をさらに増加させます。また、安心して購買ができるように、セキュリティ面の強化も実施していきます。

課題 / 施策

  • クリエイターがより収益を上げることができる新機能の開発とリリース

  • メンバーシップへの決済手段の追加で新たな顧客を獲得

  • GrowthBookの社内普及とABテストの最適化で開発生産性を向上

10: 採用領域でnote proが必須ツールとなるためのさらなる強化

noteの法人向け高機能プランのnote proは、企業が手軽にオウンドメディアを開始し、ユーザーとの関係を深めるお手伝いをしています。企業のオウンドメディア運営を強化し、ブランディング、採用、販促などの成果を後押しする機能を開発しています。具体的には、独自ドメイン機能、サイト分析機能、メンバー権限管理機能、note AIアシスタント(β)使い放題など、note pro専用機能は多岐にわたります。

2024年には、様々な機能をリリースし、企業にとってnoteをさらに使いやすくしてきました。

AIで文字起こしや原稿生成を行う『AI執筆サポート(α)』や、簡単にLPが作れる『サイト作成機能』のリリースを行い、法人向けの機能を大幅に強化しました。

さらに、ATS(HRMOS、HERP、Talentio)連携をし、クリエイタートップに企業の求人を表示できるようになりました。アナリティクス機能も強化し、記事内リンクのクリック数を可視化し、送客効果を視覚的に評価できるようになりました。

2025年は、採用領域での価値提供をさらに広げていきます。note proを駆使して求職者の集客から採用成果を上げるまでのプロセスを構築し、企業がより使いやすい法人機能を強化していきます。

課題 / 施策

  • 求職者向けの集客能力を検証し、企業の採用活動を支援

  • 分析機能を強化し、求職者集客と採用成果のさらなる向上を目指す

  • Zuora連携をより強化し、柔軟に課金モデルやプラン販売に対応する

11: 変化に強い組織を拡大していくためのエンジニア支援

2024年度は、採用や広報活動において多様な施策を実行し、多くの新しいメンバーを迎えることができました。

採用の基盤を整えるため、社内のエンジニアの育成や自律的なスカウト配信体制の構築など、次期にもつながる取り組みを実施しました。品質管理の分野では、QAエンジニアの加入により、体制がさらに強化されました。また、Findy Team+を用いた開発ボトルネックの探索により、生産性改善に貢献しました。

2025年では、採用力を強化し、採用決定数の飛躍的な向上を目指します。社外への取り組みだけではなく、開発環境の改善をはじめとして、様々な角度から開発者体験の向上を図っていく予定です。さらに、品質改善プロセスやリリースフローを整え、品質を保証する体制を構築し、安心安全なサービスを提供できる環境を整備していきます。

課題 / 施策

  • 採用候補者への重点的なアプローチとよりよい採用プロセスの構築

  • 自律的に情報を発信できる仕組みを構築し、組織内のコミュニケーションを活性化

  • CS問い合わせのアサインメントやSaaS利用時の導入フローの見直し

  • Findy Team+を活用し、開発生産性の維持・向上を支援

  • 品質保証について、QAの目指す姿を再定義し、ロードマップを策定

  • DevOpsの文脈で、開発者のフィードバックを集め、開発者体験の改善に取り組む

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