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コミュニケーションに役割と社歴は関係ない - 40人との1on1を「よもやま」してわかった対話の重要性

「チームメンバーとのコミュニケーションは難しい」と考えている人は多いでしょう。

特にフルリモート化では自然なコミュニケーションの機会は減り、雑談的な対話も減っていきます。

対話がなくなっていくと、チームのメンバー同士でも少しずつ認知が歪んでいき、だんだんと目的や目標がバラバラになってしまいます。組織の人数が増えれば増えるほど顕著になっていく現象です。

そんなコミュニケーションでの失敗をnoteでエンジニアリングマネージャー(EM)をしている福井 烈も痛感したことがあり、リクルートのカルチャーである『よもやま』を取り入れて改善をしました。(よもやま=「特に議題を決めずに話す会議」を指すリクルート用語)

よもやまを取り入れたことでチームメンバーとの相互理解が深まり、相談件数が増え、最終的には新しいチームの発足にもつながりました。

今回の記事では、EMになってからの失敗を通して、よもやまの導入方法とその効果について説明していきます。


※ この記事は「エンジニアの失敗の哲学2022 - 2023 〜失敗を生かして最高の1年のスタートをきろう〜」の登壇文字起こしです。ここからは本人の発表内容をもとに文章を構成しております。

「相談してほしい!」と宣言してから、1ヶ月誰も来てくれなかった

こちらが本日のお品書きです。

私がEMになってからどんな失敗をして、どんなリカバリーをしたのかを中心に話していきます。

まずは私がEMになった経緯についてお話します。

2020年末頃にnoteはエンジニアの数が40名ほどになりました。当時はCTOが1人で組織と技術の両方を見ていたのですが、リソース的に限界がきていました。

そこで組織面をサポートするEMを立てようという話になり、私がエンジニアからキャリアチェンジすることに。

もともと私はマネジメントに興味がありましたし、noteに8年在籍していたので社員とのコミュニケーションも円滑に進むだろうと思っていました。

EMに就任してからまず初めにエンジニアが全員いる定例会議で、「組織や会社、プライベートなことをなんでも相談してほしい」と呼びかけました。

開発チーム全体からペインポイントを吸い上げようと思ったのです。

しかし、1ヶ月経っても連絡はまったくありませんでした。自分のところに相談や報告がいくつかは来ると思っていたんです(笑)

ただ、ちょっと考えてみると当たり前の失敗なんですよね。

相談がこないのは当たり前、関係性が構築できていなかった

当時を振り返ってみると40人ほど在籍しているエンジニアに対して、私が直接話したことがある人はかなり少数でした。

関係性ができていない人に「相談してね」と急に言われても、戸惑ってしまうのは当たり前です。知らない人に恋愛相談ってしないですよね?

「EM=相談を受ける人という役割」と「noteに8年在籍していた」という2点があれば、勝手に相談が来ると勘違いしていました。役割や社歴はコミュニケーションに関係がないという学びです。

コミュニケーションの基礎である『相互理解』と『社会構成主義』を理解する

失敗をしたことからまず私が取り組んだのは、マネジメントの学び直しです。

EMとしてマネジメントとコミュニケーションを勉強していく中で、関係構築には『相互理解』と『社会構成主義』が基礎にあると感じるようになってきました。

この2点はコミュニケーションにおいて重要な要素なので、1つずつ説明していきたいと思います。

1. 相互理解とは

相互理解』とは文字通りお互いの理解を表す言葉です。相互理解は『認知の相互理解』→『仲間の相互理解』の2つのステップで進んでいきます。

『認知の相互理解』はまずはお互いを認識しあっている状態で、さらに関係が深まると『仲間の相互理解』の関係になります。

仲間の相互理解まで進むと、さらに得られるものが3つあります。

仲間の相互理解で得られるのは、『連携指示のコストの低減』『アイディアや意見の創出』『成長実感』の3つです。

みなさんも関係が深い人と一緒に働いたときに、「仕事のアイディアが自然と出し合える」「一緒に働いていて成長ができる」と感じたことがあるかもしれません。相互理解が深まると、パフォーマンスが上がる要因にもなってい。


2. 社会構成主義とは

コミュニケーションにおいて社会構成主義がなぜ大事なのかと言えば、「人によって認知はまったく異なる」ことを理解しておく必要があるためです。

社会構成主義では、「社会に存在するものは人間が対話を通して頭の中でつくり上げたものである」という考えが基礎になっています。私たちは対話することで合意形成をして、現実を作り上げているのです。

チームのメンバーと一緒に目標に向かっていくためには、対話を通して、同じ意味を作り上げていく必要があります。対話がなければ、どんどんと認知が歪んでいってしまい、共通認識はなくなってしまいます。

コミュニケーションを学び直すことで、コミュニケーションの本質は相互理解と社会構成主義から成り立つと学んだことで、対話が重要だと改めて私は気づいたのです。


リクルートのカルチャーである『よもやま』の導入

EMとして同じ失敗を繰り返さないために、社内のメンバーと一人ひとり対話して、相互理解を深めていくことを決意しました。そこで導入したのが、リクルートのカルチャーである『よもやま』です。

よもやまとはリクルート社の用語で、「特に議題を決めずに話す会議」のことを指します。これをnoteでも取り入れてみようと思いました。

1対1での対話と聞くと、「1on1と何が違うのか?」と思うかもしれませんが。私はそれぞれ違った使い方をすべきだと考えています。

1on1は基本的にはアジェンダが用意されていて、司会側と受け手側の上下の関係で行われるものだと考えています。内容も業務寄りの話になることが多いでしょう。

しかし、よもやまはアジェンダがない雑談形式であるため、1on1よりも気軽にフラットに対話することができます。

よもやまの導入方法と進め方

では、ここからnoteでどのようによもやまを導入していったのか、具体的に説明していきます。

導入する際には、ルール作り・社内LTで協力要請・予定を抑えるという3つのステップで進めて行きました。

1. ルール作り

よもやまはあくまでリクルートのカルチャーであるため、noteに合ったルールを設定することにしました。決めたルールは上記の4点になります。また、よもやま自体は1人に対して15分ずつ行いました。

対話をする大前提として、業務に関する話でなくともOKにしました。相互理解を深めていくためには雑談も重要です。子どもの話しだったり、漫画の話しだったり、タスク管理の方法だったりと様々な話をしました。

また、アジェンダは残しておくのですが、心理的安全性を保つためにデフォルトでは非公開にしています。アジェンダを残しておく理由としては、仕事上の話をしたときにエスカレーションしやすいためです。もちろんエスカレーションする際には、必ず本人に公開を取っています。

2. 社内LTで協力要請

ルールを決めたあとは社内LTでの共有です。一人ひとりの時間を無駄にしないためにも、実施する理由をきちんと説明しました。

3.予定を抑える

LTで発表したあとに40人分の予定を組んでいきました。

ここが冒頭で説明した失敗と大きく違う点です。私が相談を待つのではなく、私から予定を抑えにいっています。これによってエンジニアから相談がこないという心配はなくなりました。

よもやまを導入した効果

40人と対話をするのは骨が折れる作業ではありましたが、実施してよかったと思えることが多々ありました。「対面で話したことがなかった人」と「対面で話したことがあった人」でそれぞれ違った効果がありました。

1. 「話したことがなかった人」に対しての効果

対面で話したことがない人については、相互理解の1ステップ目である『認知の相互理解』まで進むことができた実感がありました。以前よりコミュニケーションが明らかに取りやすくなり、相手から話しかけられる頻度も増えました。

相互理解の2ステップ目である『仲間の相互理解』に進むための土台づくりにもなったはずです。

2. 「話したことがあった人」に対しての効果

対面で話したことがある人とは、仲間の相互理解まで進むことができたと感じています。よもやま行脚をやる前よりも、相談される件数が増えましたし、アイディアや意見の創出ができるようにもなりました。

実際によもやまを行ったことで、QAチームの発足にも繋がりました。よもやまの中で、「QAに取り組んでいきたい」という要望があったことで、チームを組成することができ、現在に繋がっています。やはり相互理解を深めるのは大事だなと実感した瞬間です。

まとめ:役割はアドバンテージではない。コミュニケーションの本質を理解する

EMになって活動することで、役割と社歴はアドバンテージではないことを身を持って知ることができました。待っていても誰も相談には来てくれません。自分から取りに行きましょう!

また、途中でも説明しましたが、私はコミュニケーションの基礎は相互理解と社会構成主義をもとに成り立っていると考えています。これらを理解して行動することで、チームのメンバーと認識を合わせて仕事を進めていけるはずです。

対話を通じたコミュニケーションは時間がかかりますが、間違いなく効果があるので実践してみてください。

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